招きネコは幸運を招く!

招きネコは幸運を招くといわれ大事に扱われていますが、そのルーツは意外と知られていないのではないでしょうか?

ルーツの一つと言われるのが、江戸城、川越城を築いた太田道灌に関わるエピソードです。太田道灌は文明九年(1477)に石神井を地盤とする豊島一族との争いがあり(江古田が原・沼袋の戦い)、江戸城から出て神田川・妙正寺川を遡った道灌軍と、石神井城と練馬城から出撃した豊島兄弟が激突、この戦いの後、道灌は夜道で迷い、目の前に現れた黒猫  がさかんに手招きをするので、その後をついていくと自性院の地蔵堂があった。道灌はそこで一夜を明かし、翌日体制を立て直して反撃。敵を石神井城に追いつめ勝利。闘いの後、道灌は猫を江戸城に連れて帰り、猫の死後その石像を自性院に寄贈したと伝えられているそうです(江戸城の再建を目指す会HPより)。自性院には下記の文言が記されています。

「文明九年に政争あり 猫に導(ひ)かれて福を得る 道灌公の報恩行 み像祀りしはじめとぞ」

写真:自性院入口の招き猫(猫地蔵は節分の日のみ開帳)

 太田道灌は扇谷上杉家を支え、独自に編み出した「足軽戦法」などで武将としての才能を発揮した一方で、歌人としても才能を発揮し、文武両道の模範となる人物としても著名です。歌を学び始めたきっかけのエピソードもあり、太田道灌は突然、雨が降ってきたため、農家に入り、そこの娘に「蓑(みの)を貸して欲しい」と頼みました。しかし、娘が差し出したのは蓑ではなく山吹の枝だったので、太田道灌は困惑。後日、娘が山吹の枝を差し出したのは平安時代の古歌「七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲 しき」という歌にちなんだからではないか、『蓑』と『実の』を懸け、貧しい家で蓑一つも無いことを山吹に例えたたということがわかり、農家の娘は蓑のひとつさえ貸せない申し訳なさを、山吹の枝にこめたということになり、太田道灌は娘の気持ちに気付けなかったことを恥じて、歌について学ぶようになった、とのことです。山吹町という地名もそのエピソードにちなんでいるそうです。また、太田道灌は後にその女性(紅皿)を江戸城に呼んで和歌の友としたとのことです。

太田道灌が亡くなった後、紅皿は大久保に庵を建てて尼となり、死後その地に葬られたそうです。新宿の大聖院にある碑が紅皿のものといわれています。(左写真:大聖院の紅皿の碑)

また、太田道灌は新渡戸稲造の『武士道』でも勇気ある真に偉大な人物が死に臨んで有する「余裕」の一例として紹介されており、その最期は、主君に裏切りを疑われて入浴後の丸腰だったところを襲われ、その時暗殺者は太田道灌が歌に通じていたことを知っていたため「かかるときさこそ命の惜しからめ(いざ死ぬとなると、武勇で名をはせたあなたでもさすがに命は惜しいでしょう)」と、歌により死を前にした心境を聞いたところ、それに対して、太田道灌は「かねて亡き身と思い知らずば(常々、死を覚悟していない者であるならば、命を惜しんで、そう思うのであろうよ)」と、返したそうです。太田道灌は死を前にしてもうろたえることなく泰然としていたとのことです。

招きネコにはもう一つのエピソードがあり、世田谷区の豪徳寺にあります。

豪徳寺は寛永10年(1633年)には当地を含む「世田谷領」と呼ばれる地域が彦根藩の支配となり、彦根藩主・井伊家の江戸における菩提寺に。2代藩主・井伊直孝の戒名「久昌院殿豪徳天英大居士」にちなんで、豪徳寺と改号されたそうです。井伊直孝が鷹狩りに出かけた帰り道、小さな寺の前を通りかかると、門前で一匹の猫が手招きをしており、直孝は猫に導かれて寺の中に入って休憩すると、たちまち空が曇って雷雨に。住職の愛猫「たま」のおかげで落雷の難を逃れ、説法を聞けたことに仏の因果を感じた直孝は、荒れていた寺を改築。この出来事が縁となり、井伊家の菩提寺になったと伝えられています。

(写真:豪徳寺招き猫)

また猫には色々な逸話も多く、「猫の恩返し」という話が墨田区の回向院に残っています。歌舞伎の題材にもなっており、歌川国芳の愛猫も回向院で供養したとのことです。  

(以下、回向院説明書より)

猫を大変可愛がっていた魚屋が、病気で商売ができなくなり、生活が困窮してしまいます。すると猫が、どこからともなく二両のお金をくわえてき、魚屋を助けます。ある日、猫は姿を消し戻ってきません。ある商家で、二両くわえて逃げようとしたところを見つかり、奉公人に殴り殺されたのです。それを知った魚屋は、商家の主人に事情を話したところ、主人も猫の恩に感銘を受け、魚屋とともにその遺体を回向院に葬りました。江戸時代のいくつかの本に紹介されている話ですが、本によって人名や地名の設定が違っています。江戸っ子の間に広まった昔話ですが、実在した猫の墓として貴重な文化財の一つに挙げられます。

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